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「管理監督者」の賃金未払い訴訟から

相談事例

相談者は安曇野市在住の50代の男性社員。長野県中信労政事務所や松本労働基準監督署など公的な相談窓口をいくつか訪ねて相談したが解決には至らず、行政からの紹介で来所した。

平成15年10月20日より、松本市のレストランに和食部門担当調理師として月給40万円という条件で勤務し始めた。事実上の和食部門の責任者として、開店前から閉店後の後片付けまで、約11時間から13時間労働が毎日続き、さらに月に1〜2回、業務終了後にオーナー主催のミーティングが午前2時頃までもたれ、店長とともに数値責任を追及されていた。休憩時間は90分と指示されていたが、実際には休憩室で休憩することができず、全日営業だったため店のカウンターの片隅で待機しながら休憩し、注文があればその対応のため休憩が中断されることもしばしばであった。さらに休日は特別な事情がないと取ることができず、2〜3カ月間休みなく働き続けることも珍しくはなかったし、また、私用による遅刻や早退も認められることはなかった。1年11カ月の在職期間中に有給休暇が初めて認められたのは、娘の結婚式の時だった。給料は約束通り金額が支払われていたが、雇用保険料も引かれず、労働保険未加入状態が続いた。

腰痛や風邪気味で体調が悪い時にも休みを取ることができず、勤務時間は長いし何の手当も出ない。これでは仕事を続けることはできないと思い、半年後の16年 4月頃、オーナーに退職を申し出たが、オーナーは「もう少し待て」と言うばかりで一向に退職を認めようとはしなかった。ただし、その月から突然月給に「主任手当5千円」がつくようになったものの、オーナーのワンマン経営には何の変化もみられなかった。

平成17年5月頃、もうこれ以上は無理と判断し、再度、オーナーに退職を申し出た。また以前と同じようになだめられたが、今度という今度は絶対に辞めると固く決意していたので、それから4カ月後の9月に、やっと辞めることができることになった。しかし、オーナーからは「ここを辞めた後、次の店に行って、滅茶苦茶してやるからな」と脅され、さらに「辞める前に、仕事で傷をつけた寿司ネタケースの天板を修理していけ」と言われた。個人的なミスや故意に壊したものならともかく、オーナーの指示通りの仕事をしていて消耗した分まで、なぜ自分が弁償しなければならないのかと不満だったが、これで退職できるなら仕方がないと思い、9月の給料から、その修理代金24、150円の天引きをやむなく了承した。そして、同年9月2日付で退職することができた。

退職はできたものの、在職中の長期間にわたる残業や休日出勤に対し、何の手当も出なかったことに対し何とかしたいと思い、松本労基署に申告した。その結果、間もなく労基署から調査が入った。しかし、オーナーは、和食の「板長」なのだから残業代はつかないし休日出勤も当たり前だと厚顔無恥な主張を繰り返し、数々の違法行為を全く認めようとはしなかった。その後の労基署の対応にも失望したが、違法行為を反省しないオーナーの態度は法令遵守の社会的責任の欠如であり、経営者として決して許されることではないと強い憤りを覚え、訴訟を決意した。

相談結果

平成17年10月、当センターに来所し、問題点を整理したところ、労基法はもとより数々の法令違反が明らかとなり、翌11月に、当センター顧問の永田弁護士に委任して、賃金未払い訴訟を起こすこととなった。

しかし、相談者からのタイムカードの開示要求に対し、オーナーは「会計事務所が管理しているから出せない」と不当に拒否したため、時間外労働時間、深夜労働時間、休日労働時間の算出にあたっては、労基署からのアドバイスで記録していた出退勤時刻メモ(在職期間途中に妻が心配して松本労基署に相談していた)とオーナーから業務命令として指示された勤務時間だった開店時刻と閉店時刻に基づいて計算した。

また、在職期間中に3日の有給休暇しか取れず、法的には週1日もしくは4週4日は最低でも休まなければならないのに、その3分の1程度しか休めなかった。相談者の妻も1日8時間パートで働いていたので、家族は事実上の「母子家庭」状態を強いられた。必要な時に家族や地域の手助けができないという精神的苦痛は、長時間労働の身体的苦痛をはるかに超えるものがあった。したがって、それらの不法行為による精神的苦痛に対する慰謝料も請求する。

さらに、本人からの申し出はもとより、松本労基署からの調査も全く無視し、数々の違法行為を全く改善しようとしないオーナーの態度は悪質極まりないものである。したがって、労基法上の制裁金である「未払い金と同額の付加金」も請求する。

現在、相談者は新しい職場で働いているが、松本地方裁判所にて、3,500時間を超える残業の未払い割増賃金さらに付加金及び慰謝料の支払いを求めて係争中である。

(引地強一)

   
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